No.78

「うん。でも、なんか、前向きな国だね。前向きなことはいいことだよ」
   (時雨沢恵一・『キノの旅 8』・ISBN:4840228329

物事はなんだっていつかは何とかなるし、いやな事だって忘れるものです。まぁうだうだ悩み続けるのはつらいですしね。人間万事塞翁が馬
そんなことを、終電に遅れそうであわててる人を見ながら思うのでした。

『キノの旅 8』 (時雨沢恵一・ISBN:4840228329)


旅人のキノとしゃべるモトラドエルメスの旅は、少し不思議で、少し切なくて、少し残酷で……。ひさびさの『キノの旅』な気もしますけど、『アリソン』があったから、こんなものなのかな?ぼくはキノの旅のほうが好きですねー。
今回も、最初の話が最後の話のエピローグになってます。これって結構ありふれた手法なのかな?雰囲気作りには貢献してますけど、ちょっと意味不明、といわれちゃうかも。まぁどうでもいいことです。
作品のクオリティや作風は変わってないと思います。飽きた!といわれればそれまでですけど、そういう風に飽きた〜って言っても、たのしめそうな作品かもしれません。この本はちょっと心の中が寒くて暖かくなるような不思議な感覚にしてくれるので、好きですよー。熱烈に好きだ!というよりは、買うよ〜って感じで。
収録作品の中では、「愛のある話」が抜群に好きです。ああいう落とし方をするとは思ってなかったです……。ちょっと新しいパターン?こういうちょっと絵本チックな成分もいいなぁ。「歴史のある国」「ラジオな国」「救われた国」は比較的いつも道理な流れです。師匠と弟子の破壊的な感じがよかったかな。本の中の約半分を占める「船の国」はシズくん頑張ったねーでした。いつも思うのですけど、『キノの旅』のなかの国は、技術格差が大きいなあ……。シズくんたちがどうなるか、ちょっと楽しみです。
イラストの黒星紅白さんは、白黒絵の感じがちょっと変わった?版画みたいな線と塗りになってる気がします。最後のほうのマスクを脱いだキノの絵は好き。カラー絵は綺麗です。すごい。
 
    評価:★★★