『新本格魔法少女りすか』 (西尾維新・ISBN:4061823817)

新本格魔法少女りすか (講談社ノベルズ)
世界征服をもくろむ少年と、魔法の国長崎から来た少女の織り成す、魔法な物語。どの辺が新本格なのかわからないけど、それはどうでもいいかー。なぜかにゃるら。
第一話と二話が以前ファウストに書かれていたもので、第三話は書下ろしです。
戯言シリーズと違い、出てくるキャラが少なく、徹頭徹尾大人びて、冷静で、不遜で、計算しつくす生意気小学生キズタカの主観で物語は進みます。なので西尾維新の売りだとぼくが思ってる、キャラ同士の会話の面白さみたいなものは少なめです。とゆか、面白い脇役みたいな人少ないし……。むしろ、キズタカの、ずっと考え続けて意識が途切れない思考(→参考)の妙を楽しめれば、面白いと思う。ぼくは結構気に入ってます。例えば

ぼくは、まるで自殺でもするかのような簡単さでもってして、鉄橋から、ほの暗い川の底へと向けて、飛び降りた。無論、神に祈ったりしない。

とか

靴紐が太過ぎて結びにくいし、足首まであるような窮屈なデザインの靴はぼくの趣味ではないのだが、周囲に合わせるのもそれなりに(あくまでそれなりに)大事だと思い、つい昨日、父親にねだって買ってもらったのだ。

とかいった思考、表現が凄くいい。なんとゆーか、キズタカは明らかにおかしいくらい大人びた人間なのだけれど、でもやはり小学生な一面が見れる、そういうところが表現されているのが、西尾維新のうまさであり、読者がキズタカを嫌いになったり好きになったりするところなのだと思う。個人的に勝手に思ってるだけですけど。でもキズタカって、思考能力とか連想とか分析力は特化してるけれど、発想力(無から有を生むみたいな感じ)は貧困ですよね。ぼくはいーたんとか櫃内様とかよりは、キズタカに近いタイプな気がしますよ。この辺も一応参考マデに。
ストーリーは可もなく不可もなく、こんなものかーって感じです。そんなに凄くはないけれど、最低限な感じ。おそらく西尾氏の書く魔法設定とか、りすかとキズタカの微妙な関係とか、相手の能力をどう破るかが読みどころなのだと思うのですけど、最後のは、最強の彼女が出てくる時点で半分くらい失敗しちゃってるんじゃないかなーと感じる。もっと、弱いなりに工夫して倒す!といった展開のほうが、燃えると思うのだけど。そういう意味では、ファウスト vol.3のお話はなかなか良かったのかもしれない。二人の微妙な関係は、三話目からファウスト vol.3にかけて、どんどん面白くなっているように感じるので、今後に期待です。一番期待してるのは執事のチェンバリンさんだけど。
それにしても西尾氏は、称号(殺し名?)作るの好きですね。第三話でもたくさん出てますけど、正直ちょっと食傷気味だったり。おそらくキャラ造りの過程でどんどん生まれてくるんだろうなぁ。
 
評価:★★★