『空の境界』 (奈須きのこ・ISBN:4061823612&ISBN:4061823620)

空の境界 下 (講談社ノベルス)
空の境界 上 (講談社ノベルス)
月姫」や「Fate」で有名な奈須きのこさんの同人誌時代の作品を、講談社が出版するという、ある意味なんだってーな作品。読みたかったからいいですけど……。しかもかなり売れてるようで、うはうはーですな。
あらすじは、日経新聞から引用。

この世のあらゆる「死」を見ることができる少女・式をめぐる怪異と、少女の存在を支える平凡な男との淡いラブロマンスを書いた作品。

ラブロマンスだったのか。ふむ。確かにうなずけなくもないけど……。実際には式と黒桐とその仲間達の異常な日常の物語のほうが近いかなぁ。まぁそんな感じです。
まえにも書いたとおり、上巻の半分くらいまでは読者置いてけぼりな感じで、大まかな背景とかがわからず、少し硬く、一般の人向けではないと言えます。そこから後はだいぶテンポがよくなってきて、ひきつけられるものがありますけど、やはり最初がネックでしょう。あとは、魔法と魔術の設定とか、小賢しい台詞など、ふむふむと思わされることがしばしば。ただ、普段からライトノベル読みだからそう思うのであって、普通の人にはなんのこっちゃかも知れません。
個人的には、全体的に登場人物が枯れている、空虚な感じ、悪くいえば何も生み出さない人たちの集まりの中で、生きている人間っぽい少年がそこに足を踏み入れた、「矛盾螺旋」の章が好きです。他の物語は一歩引いてみてるのですけど、この章は少し踏み込める感じで、いい味が出ていました。
気になるのは、『月姫』や『Fate』のキャラとかぶるイメージの人が多いこと。多分それらの元型としてこの小説があるが故なのでしょうけど、まーどうにかしようにもどうしようもないですしね。月姫とかが好きな人は、それが気になったとしてもぜんぜん楽しく読めるでしょうし。そういう点からすれば、ファウストの『DDDtheE』は今までとは違う感じの構成で、いい感じでした。
総評としては、面白いけど、いきなり人にこれ薦めるのは……って感じです。ちょっと深すぎる感が否めません。そこがよくもあるのですけど、かって読んだ普通の人、なんだこれーって思ってないかなぁ。
 
    評価:★★★☆