『ネペンテス』 (清水マリコ・ISBN:4840111588)

ネペンテス (MF文庫J)
動揺すると、よくないことが起こる少年祐胡の周りで起こる、ちょっと不思議で儚い物語8話。他人と距離を置き、心動かされないようクールに過ごす主人公は、しかし様々な人たちとかかわることになる……。
清水マリコさんのMFJ四作目です。ぼくはこの人の作品案外好きかも知れません。この作品は主人公がすごくいい感じで、無味無臭無感動で、いっつもあーめんどくさいとおもってるような、最近流行のタイプ。ただ、物語が進むにつれ、主人公の心の内が分かってきて、なんとなくしんみりとしたいい感じの雰囲気になれます。動揺するとよくない事が起こるという特異体質は、物語に深くかかわってくるわけですけど、最初のうちはそんなこと全然説明されてなく(むしろ忘れてたくらい)、最後のほうで重くなってくという構成になっています。もしかするとただのミスかもしれませんけど、好感をもてました。
物語は8話で、一つ一つにあたらしい人物が出てきて、それにまつわる物語というように進みます。全体的には不思議と切ないという感じですが、どちらかというと不思議のほうが大きい気がします。時々不思議すぎて、切なさがちょっと消されちゃうのはどうかと思いました。乙一さんとか、そういう意味ではうまくやってるのですね〜。そっちの方に重きをおいてもよいのですけど、やっぱり不思議とせつなさとを比べた場合、不思議さはちょっと空虚すぎる気がして、評価しづらいのではないでしょうか。
ただやはりみるべきは、上のほうでも言った、主人公の内面描写でしょう。最初のほうはその悟りきった感じに心地よさを覚えて、物語が進むにつれだんだん落ち着かなくなっていく感じがたまらないです。
というわけで、他の作品(あとふたつ)も買ってみようかと思ってます。良作とはいえないですけど、好きな人は好きなんだろうなー。
 
    評価:★★★