『小生物語』 (乙一・ISBN:4344006550)

小生物語
乙一サンは、せつない物語と黒い物語を書く有名作家さんです。*1案外その二つって近いモノなのかもしれません。ぼくはせつない乙一が好きですよー。じゃなくて、今回はその二つとも違い、笑わせる乙一というか……とにかくくすくす笑ってしまいます。
内容は乙一という作家さんの日常を、嘘とホントを交えつつ、面白おかしく書いた日記です。もともとweb上(→ここ)にあったものを本にしたもので、章の間のコラムと脚注が入ってるのが追加要素です。あと、本の形だとやっぱり読みやすい。口癖は「小生、ショックで眠れなくなった」。乙一好きな人はもちろん、知らない人にだってオススメできます。乙一のあとがきが好きな人は買うべきです。『靴下を隠せ』のあとがき、好きです。
少しネタバレ気味ですけど、あとがきから引用。

特徴は半分以上を「小生」という人称で記述していることである。しかし私は普段、自分のことを「小生」などと呼ばない。いつも自分を指すときは「僕」と呼んでいる。
(中略)
「小生」という呼び方で日記を書いているうちに、まるで「小生」がただの人称でなく、「小生」というキャラクターとして感じられるようになった。(中略)私でありながら私でない、「小生」という名前を持たないだれかがそのとき生まれた。

最終的にはその「小生」の扱いに困って、日記をやめてしまう。案外それすらネタかもしれないけれど、そういうことってよくあると思う。ぼくもこのサイトでは「ぼく」という人称を使ってるけれど、現実では「わし」だし、*2、比較的オフィシャルな場所では「私」だったりする。ネットゲームでは……、うん。 とにかく、それぞれの自分は少しずつ違っていて、その差にびっくりすることもしばしばある。多分、一人称というものは、性格に深く作用するんだろうなぁ。その点英語なんて「I」だけだから単純とゆか、面白味にかけるとゆーか。男女で一人称がきっぱり分かれてる国は男女で性格が違ったりするのだろうか。ふむ。
話を本の話にもどすことにします。中身は上のwordで取り上げたような文章、表現で構成されていて、淡々と、でもへんてこな、不条理ギャグのような感じで進んでいきます。時々暴走してると感じたりもするけど、面白い。これで900円は安いと思う。一緒にかった『有限と微小のパン』なんて文庫なのに1100円……うぅ。 下世話だとは思いますけど、作家さんの日常が気になるぼくは、すごく楽しめました。今度一人称「小生」で日記を書いてみようかなぁ。
ただ、読んでると何故か眠くなるです……。あるふぁー波?
 
    評価:★★★★

*1:みんな知ってると思いますけど

*2:おっさんかよ!とか言わないデー。自分でも変だと思うんだけど…