『空ノ鐘の響く惑星で 4』 (渡瀬草一郎・ISBN:4840227586)


あらすじはめんどくさいので適当に短く。正統派ファンタジーな世界に、おそらく異世界から来たちょっとSF的な人たちが紛れ込んでいる物語。今のところはSFな人たちでなく、中世的なファンタジー世界の人たち中心のお話です。4巻は、劣勢にたつ主人公が反乱を起こして、悪者からお城を取り戻そうとするというストーリーで、なんとなくデルフィニア戦記の面白かったとき*1を思い出しました。よくわかりませんけど、伝記ものとかいうくくりなのかな?
渡瀬草一郎さんの他の作品は、『陰陽の京』も『パラサイトムーン』も一巻を読んだだけで、そこまでして読むものでもないかなぁと思い、続巻の購入はしていませんでした。なんというか、普通、というか非常に微妙な感じだったのです。面白いことは面白いのですけど、ぐっと来るものがないというか。
そんな感じで、『空ノ鐘の響く惑星で』は最近まで読んでいなかったのです。しかし、これはいい!全然いい! 前の二作と比べ、毒のなさ、というか普通さはあまり変わりないのですが、それが安定感、安心してみていられる堅実さに変わり、キャラクターが非常に魅力的で、自然に好感が持てる感じに仕上がっています。元からなのかもしれませんけど、文章力とか表現力も結構あり、安心して人に薦められる本です。イラストも綺麗ですし、本の内容ともあっています。ライトノベル読んだことのない人に薦めるんだったらこの本かなぁ……いや、でもやっぱり『猫の地球儀』が……。うむむ。
4巻は上にも書いたように、城攻め、行軍が中心のお話です。主人公のフェリオはどんどんかっこよくなっていきます。リセリアもいます。ウルクは……最初のほうだけ。でもいいシーンはあるです。見せ場の戦闘シーンや、戦略をめぐらせる所は平均点くらいの面白さですけれど、他の細かい部分も丁寧に書き込まれているのが多分この人の個性なのだろうと思います。でもやっぱりキャラクターがかなり影響を与えているような……キャラクターを抜かしてしまうと、すごく単調かもしれませんね。今回は新キャラではないですけれど、新レギュラーになるっぽいエンジュ君がそこそこ活躍します。エンジュ君、いいやつです。ビジターのムスカとパンプキンは大分キャラが立ってきた感じ。他の人がちょっと霞んでいるのが気になりますけど……。個人的にはレジークがきちんと書かれていたのが好印象でした。ただの悪者というわけではなく、人間として彼も頑張ってるんだよなーとか思わされました。こういう話自体はよくあるお話なのですけど、とにかく、きちんとまっすぐ書かれていた気がしたのです。
そんなわけで、最近それとなく注目中です。他のぼくの好きな作者さんたちのような続きの読みたさではないのですけれど、じわじわくる読みたさというか……基本的にいいお話なのですよね。枕元じゃなくていいから、本棚にはしまっておきたい感じです。
 
    評価:★★★

*1:最初のころ、1〜5巻くらいかなぁ