『半分の月がのぼる空 2』 (橋本紡・ISBN:4840226067)


病気に入院することになった主人公・裕一と、その病院にいる難病の女の子・里香の物語。1巻でいい感じになった二人に次の受難が……みたいなのが2巻です。雰囲気的にはほのぼのラブコメな感じなのですけど、ヒロインの病気ゆえのはかなさ、せつなさ感がうまくブレンドされていて、とってもいい雰囲気が出てます。
里香がすごくいいキャラしているとゆーのも、その雰囲気の一翼を担っているとは思いますけれど、やっぱり裕一の思考の軽さも、かなり雰囲気作りに貢献していると思います。例えば、

僕の肩の上に載っているのは、スイカじゃない。かなりスカスカかもしれないけど、それでもまあ、考えることくらいはできる。
重さもスイカと同じくらいはあるんだから、ちゃんとなにかが詰まってるってことだ。

とか

僕たちは怪人と戦わなきゃいけないんだ。
現実という名の、とてつもない怪人と。

というような、中途半端に詩的で、高校生っぽい甘さが残るような軽さは、地味にこの作品の肝でしょう。橋本さんはこういうのが得意なのかなぁ。読んでいると、ほくほくした気分になれます。それでいて、なにか物悲しい感じがあるのはとても興味深いですよー。
なんというか、絵本と小説の真ん中辺りにいるような作品です。なにかを考えさせられるというよりは、はかない情景を見せている的な。宮沢賢治からの引用もすごくマッチしてます。改行の多さ(白いところの面積のひろさ)も、実はその感じを強めるためのものなのでしょうか。確かに長くて重い本では、この雰囲気は出せない気がします。なんにせよ、すごくうまくいってる作品でしょう。
橋本さんはずっと昔に『リバーズエンド』の1巻を読んだことがあって、これは合わない、とゆか、どこがいいのかわからなく、もういいやーだったのですけど(またそれか)、これはちょっと回避していたのを後悔しました。30分で読み終われそうな改行の多さは健在ですけれど、暇があれば是非に。
 
    評価:★★★