『ユリイカ 9月臨時増刊号 西尾維新特集』 (ISBN:4791701240)

ユリイカ2004年9月臨時増刊号 総特集=西尾維新
買おうか買わまいか悩んでいたのですけれど、大学の生協で見つけたので買っちゃいました。生協だとちょっと安いのです。
内容は、西尾維新という人とその作品に、いろんな偉い人が解説したり、対談したりするものです。うん、売れてるからね。それで、ネコソギはまだですか?
ふざけるのはやめにして、少し真面目(といってもあまり変わらないけど)に読んだ感想など。一番感じたことは、文学ってキモチワルイってことでした。「これはあれを象徴的にあらわしている」とか「〜なのは偶然ではない」とか、でっち上げすぎではないかと思うのです。ぼくはあいにく西尾さん自身じゃないので、そのことを考えて執筆したかどうかはわかりませんが、普通に考えて、そこまで考えてないでしょう?考えててもほんの一部だけで、あとは偶然的なものを、こうかんがえればこうなんじゃ?って偉い人が言ってるだけじゃない?と思ったのでした。大体みんな褒めすぎだし……。少しはけなす人も入れなきゃバランス悪くないでしょうかね。あと、文学の歴史とかにも興味ないし。
つまり、西尾維新のようなエンターテイメントとしての小説を書いている人に、文学としての評価を真面目に下すのは、なんかおかしくないかなーと思うのです。パンクスな音楽批評家みたいなかんじ。お前偽者だろ!ちょっと違うかな……ハリウッド映画とか、B級馬鹿映画に、難しい専門用語で解説するのに似てるのかな?どちらにせよ、芸術と娯楽の両面の葛藤が激しい小説世界にありがちな事柄っぽい。
そんなことを、本=娯楽と捉えているぼくのほうから言っても待ったく無意味わけで、新しいムーブメントとして、時代の流れとして西尾維新を捉えてる人からすれば、この本はあってしかるべきものなのでしょう。
好意的に解釈するならば、そこそこは面白かったかもしれない。斉藤環さんとの対談とかはなかなかよかったし、少しの発見がないこともなかった。『きみぼく』で、数沢くんと夜月が同じくらいの体格で、琴原りりすに抱きつかれたときの感じが夜月に似てるというのが伏線だったのは知らなかったし。最後のほうにある「エンサイクロペディア・オブ・西尾維新」も、忘れた人を思い出すのに有効です。西島大介さんの漫画は、不覚にも笑ってしまった……。馬鹿馬鹿しすぎ。冲方丁とのQ&Aは、実は一番楽しみだったんだけど、二人とも空回りしちゃった気がしました。
あと、書下ろしはまぁ、そんなによくはなかった。でも、メフィストに載ってたのよりはよかったと思います。4分の3くらい読み進めたところで、おーおもしろいかも、と思ったのに、最後の落ちが微妙で残念。『テロリズム』とか、個々のパーツはすごい西尾さんっぽく光ってました。それにしてもこのごろの西尾氏はあれかな、舞城さんみたいに、純文学もできるって言いたいのかな?青春エンタで十分ですよ……?
なんかいろいろ書こうと思ってたのですけど、忘れちゃったみたいなのでこれでいいです。お勧めかといわれると、あまりお勧めできないといいます。純粋な西尾読者は楽しめないでしょう。そういう人からは、なんかピントがずれてるように感じると思います。特にライトノベル畑の人は。書き下ろしのためだけに1200円はばからしいですし……。
最後に、舞城、ユヤタン西尾維新のうち、西尾維新がライトのベルの世界で認められているのは、ほかの二人と違って、表面だけなぞっても面白いからだと思います。たとえば、キャラ同士のコントっぽい掛け合いとか。それが、西尾維新の肝だと、ぼくは思いますよ。
 
    評価:★★