No.81

立ち上る巨大な地上光が夜の空をかすませていた。膨大なエネルギーが星をかき消し、といってもその多くは無駄遣いだ。街灯、ネオン、ヘッドライト。昼間と同じ世界を創り出すためにあらゆる物が動員される。自然の摂理に牙をむくか、あるいは天に向かって手を伸ばす亡者のごとく、白い帯が都市の上にゆらいでいた。
明かりに群がる蛾のように1000万の人間が集う首都、東京。
地方の時代、なんて幻想はここにはない。人間のあくなき欲望に従って忠実に構築された都市。夜を昼に変え、眠ることを知らず消費を続ける。
東京には田舎の二倍の時間があるのだ。
    (川崎康弘・『Alice』・ISBN:4840228388

イントロの最初の部分です。最後の部分がいいなー。都会にいると、ホントそう感じます。
本題とは関係ないのですけど、地方の時代って来るのでしょうか。東京が恐ろしく発展しているのは、政策を決める所が東京にあって、それを受注する業者が近くに集まってくるのが最初の原因らしいです。地方分権が進んで、政策の決定権の多くが地方にゆだねられると、分散するのかな?……それとも、収穫遁増? きっとある程度は働くけど、それに至るには時間がかかるとかいう問題なんだろうなぁ。