『食卓にビールを』 (小林めぐみ・ISBN:4829162678)


食卓にビールを』は、女子高生で主婦でSF通な主人公がさまざまな宇宙人とふれあう、SF風スラップスティックです。表紙の裏のあらすじのところに書かれている、「通常の3倍のスピードで人生を駆け抜ける」って設定はなんなんだろ……。本文中にもそれについて何も触れられてないし。
本としての出来は、結構成功してると思います。SFな知識がぽろぽろと出てきて、それで宇宙人と議論したり納得したりするのですけれど、SFという材料をうまくコメディにできているでしょー。
SFを生かした笑いもそうですが、この本の一番の重要な下地は、ぼくらとあまり変わりない世界の描写なのに、宇宙人がいる、そこではないでしょうか。そのちょっとした違和感(科学は進歩してないの?とか、侵略されてないの?とか)を巧妙に隠して、その気づかないむずむず感が、この変な雰囲気を作ってるように思えます。主人公以外が宇宙人とコンタクトしている場面がないのは、その効果を高める一番のツールでしょう。
まーあれです。小説を読んだときに感じることの出来る、ちょっと違う世界に踏み入れちゃった感を簡単に感じられる良作でした。SFスキーな人に読んでほしいなぁ。ぼくはSFちょっとスキーですけど、知識みたいなものを得ること出来ました。
あと、この小説の一番のなぞであるところの、「女子高生がビール飲んでいいのっ?」についてはうたたねこやさんの9/4あたりでまとめられてます。あとこの追記も。つまり最初は29歳の主婦(小林めぐみさん……?)が主人公だったのですけど、じょしこーせーにしたほうがよいという判断があったわけで。なるほどねー。何で20歳とかにしなかったんだろ。女子高生のほうが、変な違和感あっていいと思ったのかな。それとも単に購買層をにらんで?まーそこまで致命的だとは思わなかったけど……。高校生だってビールくらいのむしっ。
 
    評価:★★★